第二話 ギルド【雫石】

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二人を家に残し、俺は一人町役場へと向かう。そこにはさっきまでとは違って、おっさんが一人でグラスを傾けていた。その背中は心なしか小さくも見える 「何じゃ、この町のことで聞きたいことでもあるのか?」 「それもあるが、それは全部片付いてからだ。それよりも、おっさん。ちょっと一杯付き合えよ」 俺は家から拝借してきた酒瓶を手に、おっさんの横に座った。おっさんは黙ってグラスをもう一つ用意してくれる、どうやら話を聞いてくれるらしい 「で、その感じだと何か話に来たんじゃろう?」 「まぁな。ちょっとした昔話さ。俺はな、ここに来る前には別の国で軍人をやってたんだ。遠い遠い国さ」 グラスを傾けながら話を続けていく。おっさんの表情は見えないが、真面目に聞いてくれてるのに間違いはないだろう。俺はそのまま話を続ける 「親父が軍人だった影響でな、飲み込みが早かったからすぐに将官クラスまで登り詰めちまったよ。上の連中は腐ったやつらでな、何かとつけて金と権力と喚きやがるクズの集まりだった。けどそんな軍の中にも唯一尊敬できる人がいたんだ」 「お前さんも苦労してるんじゃな」 「まぁな。だけどその人は違った。仲間を大切にし、自分が信じたものを守り抜く、常に自分のなかに信念を持っていてそれを貫いていた。最後はその信念を貫き通して逝っちまったけどな」 物音一つない空間にグラスの氷が転がる音だけが広がる。そしてその中を単調な言葉だけが紡がれてゆく 「俺はその人の信念を無駄にはしない。その人が心に掲げていた守りの精神を俺は紡いでいく。だから俺も俺が信じるものを守ることにしたんだ」 「そうか…」 「だけどな、俺は完璧じゃねぇ。精々人よりも身体能力が高いだけの人間だ。だから仲間が必要だ。背中を預けれるくらい強い奴がな」 「ふふっ…最近の若僧は結構言いたい放題言うんじゃな」 「わかいから何でも言うんだよ」
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