0人が本棚に入れています
本棚に追加
と言われたりしていた。そして、更にその大山曰く、命を賭してまでして発着艦に挑戦するのはいいが、特に着艦というのは、艦(ふね)に頭から突っ込んで自爆攻撃を行うようなものだから、命がいくつあっても足らぬではないか。果たしてそこまでする必要があるのか。このことがそれほど重要なのか、といったことも云っていた。が、吉成が思うに、その反面、海戦を制するのは、これからは航空機なのだ。多くの利点を考えれば、海戦において絶対的に有利なのは明らかだ。が、しかし、その前に、もはや航空機というのは??赤トンボ″どころではないことを実証する必要があるのだ。しかも、飛行機乗りたるもの、折角、移動海上航空基地である空母と最新鋭の艦上機が目の前にありながら、母艦である空母に発艦と着艦をせずば、その任を全うしようがないではないか。海軍の航空機は大海原を戦場とするのが本分ではないのか。軍人として戦いに参加して手柄の一つも立てたいが、その航空機は空母なくしては洋上では戦いようがないから、手柄の立てようがない。それでは航空長心得の名が廃れるというものだから、ここは是非ともやるべしではないか。我々がやってやれないはずはないのだから、近頃躍進目覚ましいといわれている陸軍の航空隊に後れを取ってはならない。そんな様々な思いから、不退転の意識を持つようになっていた。
それから暫くして、やっと海軍軍令部から航空隊へ連絡が入った。
さんざん待たせた挙げ句の、その内容とは、
―鳳翔からの発艦及び着艦に要する準備を行い、指示あるまで待機せよ―
というものであった。これを有り体に解釈すれば、要するに、追って沙汰があるまで何もせずに待てというものだったのである。
これでは、「鳳翔」の航空長としての役目を果たせるどころではなかった。
しかも、その後一向に海軍軍令部からの音沙汰(れんらく)がなかった上に、断片的な情報しか入ってこなかった。どうやら、これに関して、海軍軍令部内部で何やら揉めている様子であった。
最初のコメントを投稿しよう!