姉 祥子の物語 《今宵、ただ一夜》

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宿の一郭に明かりを見れば、 かの方がひとり月を肴に 御酒を召していらっしゃる。 奏一さま、声をかければ 吃驚なさったお顔で私を見つめる。 それは驚かれたことでしょう。 いつもきちんと着付けをした 袴姿か振袖でしか お目にかかったことがないのですもの。 このような襦袢めいた薄物ばかりで お会いしたことなんて―― いいえこの先も ないと思っておりましたのに。 「なんという姿か、 人に見られたらどうするのだ!」 親のようにいさめるのですね。…… 私はそろりと部屋に上がり込みました。
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