第1章

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声が聞こえる。 父さんかな? それとも母さん? ごめんね。 心配してくれているのはわかっているんだ。 辛い現実から逃げているのはわかっているよ。 それでも、届かないこの手はどうしたらいい? だから、まだ寝ていたい。 夢の中なら、俺は幸せな自分でいられるから。 悠介、俺はお前を縛り付けたくなる前にいなくなるほうがいい。 ごめんね。 好きになってごめん…。 どのくらい年月が経ったのかわからない。 今日も声が聞こえる。 時々、夢と現実の境界線にいるみたい。 それでも、まだ怖い。 悠介は俺のことなんてもう忘れているだろう。 だから、もし現実に戻ってもいいかなって思えたら。 その時は新しい人生を送るのもいいかもしれない。 ひとりでどこかに旅するのもいいかもしれない。 でも、もう少しこのまま眠らせて。
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