桜散る

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こうして横須賀と堀田は急遽他のメンバーとは別のメニューを行うことになった。 「珍しいね、ゴム弓だけやった事があるって」 道場の隣にある建物の大きな窓ガラスを鏡がわりに使い、ゴム弓のゴムを右手で引っ掛けながら堀田が話しかけてきた。 「堀田くんこそ珍しいね。俺は友達が教えてくれて出来るようになったんだ」 横須賀は自分のゴム弓を眺めながら当時の事を思い出すように言った。せっかくだからと、入院中だった友達が教えてくれたのだ。そして、このゴム弓をくれた。他のゴム弓と違い、下の所のおもりの部分に丸い和風のストラップが付いている。 「あはは、変わった友達がいるんだね」 ゴムを離す音とともに残心をとり、弓倒しをすると堀田が横須賀の方を見て言った。 「堀田くんは?」 「堀田でいいよ。何なら流でもいいよ。僕は、兄の影響で弓道がやりたくなってね」 堀田には兄がいるそうだ。堀田兄は成績優秀で、インハイにも出場した。堀田はすぐにでも弓道を始めたかったのだが、中学校にはなかったためゴムだけでも、と兄に教えてもらったらしい。 「弓は重いからって引かせてもらえなかったけど、おかげさまでゴム弓は完璧になったよ」 「そっちこそ変わってるね、中々いないよ」 それから、と付け足すようにして 「堀田って呼ばせてもらうね、堀田も俺のこと好きなように呼んで」 「じゃあ横ちゃんかなー」 「よ、横ちゃん?」 「嘘、朝日って呼ばせてもらうよ。改めてよろしく朝日」 そう言ってニッコリと笑みを浮かべ、堀田は手を差し伸べた。 「ああ、よろしく」 差し出された手を握り返し横須賀もまた笑みをみせた。 その後、しばらくゴム弓を使っての練習をしていると、18時となり部活は終了した。
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