あの終りのない夏の日に

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駅に着くと、やはり伯母が車で迎えに来てくれていた。 私の姿を見つけるなり「真ちゃん」と大きな声で呼びながら改札の外側から手を振って来た。 私がご無沙汰していた事、父が体調を崩して来られない事、出席の返事が遅れた事等々のお詫びがてら通り一遍の挨拶をしていると「そんな事いいのいいの、早く車に乗りなさい」と明るく言って来る。 この伯母ならば、祖母が亡くなった後も里夏に優しくしてくれたのではないかと、差し出がましい想像を働かせている時に、私は漸く自分がいかに独り善がりだったかと言う事に気付いた。 私の立場は逆なのだ。 私は伯母に対してお詫びよりも真っ先にしなければならない挨拶を忘れていた。 「伯母さん」私は歩き始めた伯母を呼び止めて言った「この度は里夏さんのご結婚おめでとうございます」 すると、それまで笑顔だった伯母の顔が切なそうに崩れ涙が頬を伝った。 「あの子は心の優しい子だからね、誰よりも幸せになってもらわなきゃ」伯母は涙を指で拭いながら言う「ごめんなさいね、あの子の事を思うと健気に頑張ってる姿ばかり思い出してね」 私は自分が虚妄の世界でさまよっている間も、里夏は厳しい現実の中でひたすら頑張っていた事にやっと思い至った。 「でも涙はここまでね」伯母は笑顔に戻って言う「おめでたい時に泣いてたんじゃあの子に失礼じゃない、ねぇ」 私は「そうだよ、伯母さん」と明るく言って返したものの、明日伯母はきっと泣くと思った。 いや、伯母だけじゃなく伯父はもっと泣くだろうし従兄も従姉も泣くに決まってる。 でも一番泣くのがこの私だと言う事も私には分かっていた。 しかし、それは失礼な涙なんかじゃない。 その涙はみんなが里夏を愛するが故に流すものなのだから。 駅の大きなガラス扉を押し開けて外へ出ると、冷たい風に思わず身震いする。 そして一面鈍色の雲に覆われた空から白い雪が舞い落ちて来た。     
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