あの終りのない夏の日に

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10年ぶりに見る町並みは雪のせいか全く見知らぬ場所の様だった。 それでも記憶に残る海沿いの道から途中で山道に曲がったのは分かった。 伯母に聞けば、家の裏山を切り崩してバイパスが通ったのだと言う。 「お陰で便利になったのよ」伯母は嬉しそうに言って来る。 それから脈絡もなく、里夏のフィアンセが真面目な好青年で安心して任せられる、と言う様な話に移った。 私は窓から降りしきる雪を見ながら、その話を聞き流していた。 その時、前方の道の両脇に立ち並ぶ木立が目に留まった。 「伯母さん、ここで止めて」私は咄嗟に言う そして呆気に取られた様子の伯母に、寄りたい場所があるから先に荷物だけ運んでおいて欲しいと言い残して、私は車から降りた。      
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