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"分隊システム"
分隊――つまりチームのことだ。
約9千万人のプレイヤーの中から、そのときログインしているアバターを無差別に抽出して分隊を組ませる。
その後ランダムに設定されたマップに送還され、その国の兵士と戦闘を繰り広げるのだ。
また、兵種などもランダム編成らしい。……が、大体俺は衛生兵か偵察兵と言った、『直接攻撃をしない』戦闘員に割り振られることが多い。
もちろん分隊のメンバーは全員知らない方々。
……そんな中での全体ボイスチャットなので、注意されると恥ずかしいわけだ。
はぁ、と小さくため息を吐きながらも、俺は分隊長の命令通り『M82A1』を降ろした。
腰から双眼鏡を取り出して、敵の拠点の様子をうかがう。
……。
…………。
敵NPCの数はざっと見ても50人は超えていそうだ。
そして敵拠点の後方から運ばれてくる3両の戦車。あれは援軍だろうか?
さらに前方では数人の兵士がバリケードを設置している。
こりゃまずいな。
俺はメニュー画面を呼び出して、ボイスチャットを選択する。
「こちら前衛、偵察兵。敵基地にバリケードが設置中、早急な対処をお願いしたい」
報告からわずかな間が生まれる。
俺がハラハラしながら待っていると、ノイズと共に分隊長の渋い声が流れ始めた。
『了解した。これより全軍、砲撃の準備に入る』
あー、よかった。
これで俺はやるべきことはやった。負けても俺のせいじゃありませーん。
心の中で小学生みたいな言い訳を並べたてると、背負っていたバックの中身を漁る。
……おお、あったあった。
俺はバックの中から『目当てのモノ』を取り出すと、腰に装着する。あくまでも念のためだ。
「――放てッ!」
ここからだと遠すぎてあまり聞こえないが、怒鳴る分隊長の声が風に乗ってやってくる。
その瞬間、戦場に大きな爆撃音が響き渡った。
光を帯びた一筋の砲弾が、味方の基地から敵の基地に通じる太い道路を一直線に突っ切っていく。
それによって発生した突風が道路脇に植え込まれた街路樹を大きく揺らした。
す、すげぇ威力だ……。
慌てて双眼鏡を覗くと、敵のバリケードは完膚なきまでに打ち砕かれていた。
「――次弾、装填!」
間を置かずに吠える分隊長。
これは勝てるんじゃないか……? と期待する。
その瞬間だった――。
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