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そして、出会い
――朝鮮エリア・ソウル特別市【市街地マップ/朝/晴天】
たたたた、ダダダン、ダダダン、ぱらぱらぱら、ドカン……。
その戦場には絶えず軽い銃声音が響き渡っていた。
我が軍と敵との交戦距離。およそ700m。
俺――銀峠 大牙は背負っていた対物ライフル『M82A1』を構え、土嚢で銃身を固定させると、スコープに目を当てて覗き込む。
スコープ越しに見える仮想空間に居たのは、敵の拠点でわちゃわちゃと忙しく動くNPC達。
その中の一人に照準を定めると、ガチャリと静かに引き金を引いた。
強い反動と共に、銃口から打ち出される銃弾。
>ギンガ が NPC:??? を射殺
ターゲットだったNPCの頭は吹き飛び、視界の端にキルログが流れる。
よし! と心の中でガッツポーズを決めた。
この調子でキルを稼ごうと、コッキングで薬莢を弾き出し、再度スコープに目を当てる。
じんわりアドレナリンが放出されていく感覚を噛み締めていた。
『こちら分隊長、こちら分隊長。前衛の偵察兵に告ぐ。無用なキルは避けるように』
こいつ直接脳内に……! ではなく、ボイスチャットである。
これは戦場における味方同士の唯一の連絡手段。
近距離の味方には普通に話すことで言葉は伝わるが、遠距離にいる味方にはボイスチャットを使わないといけない。
――それで分隊長は俺を注意したんだ。
……。
恥ずかしさのあまり顔に血が昇っていく。顔が熱い。
慌てて空中をスライドし、メニュー画面を表示させる。その中のボイスチャット項目をタップして言い訳を始めた。
「す、すいません……。他の人が撃っていたので……」
現に背後で銃声は鳴り響いている。
『これは威嚇射撃だ。君は偵察兵という自分の立場をわきまえて行動しなさい』
「は、はい……」
まさにぐうの音も出ない正論だ。
が、こっちだって偵察兵になりたくてなってるわけじゃない。
クソッ!
『敵の拠点の状態を把握しだい、逐一報告するように』
それだけ言い残すと、分隊長はプツリとボイスチャットを切断した。
あー恥ずかしい。これ、分隊の皆にも聞こえてるんだろうな……。
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