0人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
ほとんど眠れない内に、闇が薄まってきた。
マーサはじじとばばの家で、息を詰めるようにその時を待っていた。
「お願い…上手くいって…。」
町はまだ多くの人が眠っている時間。でも、だんだん明るくなってきて、魔術師の力がだんだん弱まる時間。
そして。
誰も気付くものはなかっただろう。
ぐわん!
王様から、一瞬大きな波動が放出された。時空にわずかに歪みが生じたがそれも一瞬だった。
そして、明け方早く、遠くの山々から起き出してくる鳥たちの目の前で、昨日蒔かれた様々な種が見る間に芽を出し育ち、一気に一面鮮やかな新芽の緑に覆われ、ほどなく一面花を咲かせ始めた。
波動に合わせ、王様の囚われた家に近い場所から次々と、黒い世界に彩り鮮やかなやさしい波が寄せていくように、変化していったのだ。
鳥たちは歌った。
僕たちの撒いた種が咲いた!全部、いっぺんに咲いた!
鳥たちのいつにないにぎやかさに、人々も起き出してきた。
「あ…!」
「おぉ!」
「色が!色が戻ったぞ!」
町中に色が溢れた。
最初のコメントを投稿しよう!