5章

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王様は、城に戻った。 城内の中庭や建物の中まで、美しい花で満ちていた。突然黒い色がなくなったせいか、手下として使われていた人々の制御も出来なくなったのだろう。身近に置いていた者に襲われかけ、魔術師は、自分の身を守るのに精一杯のほうほうの体で逃亡していった。 「私が患った病も魔術だったのかもしれぬ。」 王様は城に集まった人々に語った。 「年をとった人間の体を操作するなど簡単だったのだろうな。それをきっかけに、マーサの心を操り、町から色を奪わせ、自分の力が最大に発揮できる土壌を調えたのだろう。」 町の人々は、操られていたとは言え、マーサのしたことに大変苦しめられた。簡単に許すことは難しい。だが、魔術にかかっていない花の種子を、遠くの山のじじとばばのところから、命懸けで運んできたのはマーサであったという。国の人々を助けたい一心で。わかってはいるのだが…。 そして、何故かマーサの体にかかった術だけはまだ解けていなかった。 虹色の美しい姿を取り戻したナナが、王様の隣の宙に浮いているかのように、止まっていた。
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