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1つ目は極道絡みの店長に返済し続けていた借金が完済。
最後の返済は、度胸を決めて、ヤクザの組長代行の山口さん立ち会いの下、直接店長に手渡しした。
支払い続けた期間は7年。
支払い総額は1500万超え。
15歳だった俺とユリコも今は22歳。700万だった元金も、利息があるから総支払額も倍以上。
途中、何度も延滞し、店長に弁護士を立てるかも知れないと連絡したこともあり、結局暴利を飲み込み完済した俺たち。
暴力団からも金のケジメを付けたから、もう追われることはなくなった。
その直後が2つ目。
俺の母が大腸ガンで倒れたと連絡が入った。
迷惑しかかけてこなかった俺は肩親しか居ない母なのに、親孝行なんて言葉は意識したこともない。
名古屋へ行き借金を返し終えたばかりなのに母が入院する名古屋の病院にとんぼがえり。
主治医から言われた。
母の命は長くとも半年。
ガックリと不甲斐ない自分の人生を振り返り、大阪に戻った直後、ユリコから3つ目。
「コウちゃん、大事な話があるの」
いつも陽気なユリコがソファーを指差し、真剣な表情で座ってという。
お気楽娘が珍しいと思い、椅子に座る。
「どうした?」
「アタシ、できちゃったみたい」
「は?」
ユリコにはこれまで、そよ風を台風に変えるほどのエピソードが沢山あるから、今度はどんな厄災かとビビったよ。
「赤ちゃん」
なーんだ赤ちゃんか いや待て 赤ちゃん!?
俺、詐欺師だよ。
「あ、あ、赤ちゃん! マジ?」
うつむき頷くユリコは3か月という。
「アタシ、産みたい、産みたいよ!」
こういう時って思考が目まぐるしくなって、建前しか出てこないんだなぁ。
「そ、そうか、俺たちの赤ちゃんか、嬉しいよ」
本当は思考が空転している。
やっと借金の返済が終えて、遊びまくれると思ったのに、ガキなんて面倒だし、金がかかるじゃねーか!
今22で、産まれる頃には23歳だから、世間的には少し早めの子持ちになるけど、俺は借金地獄から脱出したばかり。まだ若いし遊びてェ!
でもそんなこと言えない。
この7年間、美しいユリコの1番美しい貴重な青春時代を奪ったような責務ものしかかる。
◆
子の生。
母の死。
同時に訪れるーー。
『生と死』
【1年半後】
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