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「なぜその裏稼業で稼がん? 架空口座なら詐欺師から二重に儲かる上、告訴も皆無。詐欺師の腕が良ければ億超えの儲けすらあり得るぞ?」
「娘が生まれた時、誓ったんです」
「どう誓った?」
「この子だけは、“全うな金”で育てると」
ヤクザを相手に全うな金なんて言ったら逆効果かと脳裏によぎったが、あえて本心をさらけ出した。
だが、山口さんは「俺を前にしてよく言った」と鋭い視線を俺に向ける。
「本心のみを伝えねば失礼かと」
「……分かった、その意気込みを汲んで、俺はお前を人として認める。どこの金融屋だ?」
闇金の名前をあげるとアッサリ引き受けてくれた。
ビックリしたよ。
その闇金は極道のケツ持ちも無い半グレ集団で、山口さんは子バエが邪魔だと目を付けていたという。
なぜ子バエかと言うと、山口さんの傘下も街金をしているからだ。
街金は貸金業法に定められた都道府県知事・財務局長への登録をしている業者。
テレビCMなどでやっている消費者金融との違いは、その規模だ。
街金は小さいがゆえ地域に根ざしている。だが違法スレスレの取り立てもする。
山口さんの組織は暴対法の網をくぐった正規の金融屋。
闇金はルール無視のアウトロー。
山口さんは部下に電話を1本かけると、1階の事務所へ来いと俺に言う。
ええ……暴力団の事務所なんて怖いなぁ。
そう思い行ってみると、1階の事務所は普通の会社の事務所と何ら変わらない。
見た目普通のスーツ姿のサラリーマン5人とOLも3人いる。
山口さんは直ぐにFAXに届いた資料を眺め、「半グレ集団の所有する俺(元はユリコ)の債権譲渡が完了した」と言った。
早っ!
直ぐに譲渡された債権による山口さんの経営する『ウキウキローン』の借用書を書かされ、印鑑も押した。
二千万もの大金をわずか数分で移行する権力と手際の良さにビックリだ。
助かった。いや助かってないか。
闇金は利息だけでも1日20万円。
このウキウキローンだとウキウキはしないが返済はかなり楽。
山口さんは、俺がかつて返済した1500万円の実績がある事と、その逃げ切ろうと思えば逃げ切れる夜逃げ屋の手口を自ら封じる潔さに惚れたという。
最後にこう言われた。
「ゴールはある、だが厳しい道のりだぞ」
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