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翌日、土方(どかた)の仕事を早く切り上げた。
気の強いユリアが泣くのはよほどの事だと思い気まずいだろうと、学校から帰って来たユリアを団地の隣へ遊びに行くように言い、隣の奥さんに預けた。
訪問した真由美先生も、本人がいない方が言いやすいと同意。
真由美先生は、こう話し始めた。
「ユリアちゃんがクラスの女の子5人を泣かせたんです」
「ユリア1人で ですか?」
「はい、1人対5人です」
「5人も……!」
「ただその泣かされた5人以外に、争いを観ていた他の子まで泣いてしまいました」
「観ていたギャラリーも! ですか」
「ええ、内容が内容でして、他の子たちも感動してしまったんですよ。当の5人の親御さんには昨日お家にてお話しました」
それで昨日先生はうちに来ようとしてたのか。
真由美先生は、出したお茶にも手を付けず、目頭をおさえるハンカチを握り締めて語る。
◆
1時間ほどの内容だった。
昨日のユリアの涙の原因も分かった。
それどころか俺自身も今 涙が溢れて仕方がない。
1人対5人。
成長著しい女の子同士の闘い。
事件の内容を居合わせた複数の生徒から複雑な内容を精査した真由美先生の内容。
真由美先生は帰り際、こう言った。
「私は10年教師をしていますが、ユリアちゃんみたいな子は初めてです。この事を糧に、教育を1から勉強し直しします。ありがとうございました。あなたの教育は間違ってません!」
最後まで高ぶった気持ちを抑えようと努めた真由美先生は正しい。
分別のある教師を初めて見た。
うちの玄関先で先生の後ろ姿に頭を下げる。
ありがとうございました。
頭の中で整理すると、内容はこうだ。
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