コウスケ

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先輩たちの説明により、俺がネズミを殺す。 先ず厨房の下水の直ぐ上の床に業務用の大きなゴミ箱を置き、水道のホースから八分目まで水を入れ、同時に殺菌するため漂白剤を注ぎ込む。 そこに暴れまくっているネズミ捕りを沈める。 金属製の(かご)は当然ゴミ箱の底に沈む。 当たり前な話、(かご)の中のネズミは呼吸が出来ないからもがく。 このもがいているネズミが凄まじくグロテスクなんだ。呼吸をする為に全身をうねらし泳ぐんだ。 うねって うねって うねる! でも呼吸なんか出来ない。 全生命力を最後の最後まで振り絞る1生命。 絶対に死ぬ状態にした上での屠殺(とさつ)。 人間と同じ哺乳類が、もがき、苦しみ、足掻いている状態を凝視していると、現代社会のぬるま湯でのうのうと生きている自分が、日本人が、人間が、いかに恵まれた環境で生きているのかを思い知らされている様だ。 4分くらい頑張ったネズミは、最後の声なき断末魔を俺の目に焼き付け、指の細かな痙攣(けいれん)を最後に、絶命した。 と、これで終わりか。と思ったら、まだある。
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