141人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
ばかやろう、やめてくれよ。
結婚式場の親族控え室に、23歳になる娘のユリアが眩しいほどの美しいウエディングドレス姿で現れた。
よく映画やドラマで「お父さん、今まで育ててくれてありがとう」っていうやつがあるだろ。
俺はこの典型的なシチュエーションがいつ来るか、いつ来るかと昨日から逃げていた。
恥ずかしさのあまり、あわよくば逃げ切れるかと思い、昨晩は家には帰らなかった。
今日も休むどころか仕事を入れ、嵐のように掛かってくるユリアからのメールと電話の怒号により観念し、つい今しがた結婚式場の控え室に到着したところだ。
「お父ちゃん、あの……」
気恥ずかしい面持ちで、ユリアがこちらにやって来る。
「やめれ!」
テンパって噛んだ。
俺には無理だ! 無理なんだよ、こういうの!
最初のコメントを投稿しよう!