コウスケ

5/32
142人が本棚に入れています
本棚に追加
/157ページ
1985年に入学した定時制高校は、中学校からの紹介でネジを作る会社で昼間は働き、定時で上がるとすぐさま登校、夜の10時前まで勉強だ。 勉強といっても、教室に入って出席さえしていればよかったから、誰も勉強なんかしちゃいない。 なにしろ入試0点の白紙で入れる高校だから、県内のワルばかり集めたような悪の巣窟(そうくつ)になっている。 教師も荒れている事は最初から承知の上で、誰も見ていない黒板に誰も読めない漢字を書きながら、誰も聴いていない教室のあさっての方向に小声で説いていた。 見て見ぬフリをする教師がいる中、カップラーメンを食っている奴、喋れば息がシンナー臭い奴、ラジコンをやっている奴、プロレスごっこをしてマジ切れしている奴らが暴れている。 無法地帯だ。 そんな状態だから、1年生の最初の夏休みで4分の3が脱落し、卒業できる奴は10分の1程度。 例に()れず俺も多数派に入ってしまった。 1年生の1学期も終わる頃、0点で入学した先輩が、奇跡のごとく2年生に上がっていて、授業中に俺の教室で、金になる仕事を教えてくれたんだ。 金になる上に、女の不自由もない仕事。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!