三話

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最早、これは起こるべくして起こったと言っても過言ではないだろう。ここ数週間を観察していれば誰にだって想像出来る結果だ。 美結の前に立ち憚る数十人の生徒。その目は皆一様に怒気を放っている。一触即発。そんな状況だった。 「…席に戻ってください」 「やなこったぁ!」 「誰があんたなんかの言うことなんか聞くかよ!」 男女両方が入り交じり、逆廻美結の前に対峙した。 クラス役員を決定する時間のことである。まず初めに委員長である美結から注意の言葉があったのだが、それを聞いていた生徒の一人が楯突いたのだ。それに合わせて他の連中も不満をぶちまけ始め、やがてこういう状態にまで発展した。 美結はやり過ぎたのだ。 クラスの大半が怒り散らすほどに。 先生は先生で、不測の事態にあたふたと慌てるだけで何の役にもたっていない。 「はぁ…」 緊迫した状況の中、美結は呆れたとため息をついた。 「揃いも揃ってお子様の集団ですか?皆でやれば怖くありませんか?間違いを指摘されて逆ギレって、高校生として恥ずかしくないんですか?」 相も変わらず勢いの抑えを知らない舌技が引き金だった。全員が怒声罵声を浴びせ、彼らの限界は頂点に達する。 「ま、まま、待ちなさい!」 ここでようやく教師が介入の意を見せた。 「君たち、落ち着いて!」 二極の間に割って入った。 「逆廻も、とりあえずここは謝っておいてくれ」 「なんで私が謝るのですか、理解できませんよ」 「逆廻も少しやり過ぎだっ、委員長を任されて張り切るのはいいが、刺々しくし過ぎてもクラスはまとまらないぞ」 「私は間違っていることを間違っていると言った迄です。私の何が間違いだと言うのですか?」 このとき、美結の表情もひどく険しくなっていた。教師までもがそんなぬるい事を言うのかと。失望を隠し切れない。 「てめぇの態度が気に食わないんだよ!」 「そう、いちいちウザイんだよ!ポリ公か何かかよ!」 教師の後ろからまだ収まらない暴徒達が口々に声を荒らげる。
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