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「あの女、6時にお願いしますって、言ったよな」
壁の時計は、その時を15分過ぎている。
「学校で、5分前行動って習わんかったんか?」
苛立ちのあまり出身の関西弁が出た。
(なんだか、久しぶりの自分らしい言葉……)
時計を見上げたまま、腕を組んで立ち止まった。
(あっ、しみじみしている場合じゃない)
店の中を歩き回りながら、扉が開くのを待ち続けた。
「遅い、遅すぎる。入社式、遅刻するぞ」
いや、今日は入社式、人生の中でかなり大切な日だ。
(………何かのトラブルか?)
昨日から出したままの、女の子のカルテを手に取った。
「麻生梨々香、電話番号は……」
何度か躊躇したが店の電話から女の子にコールした。
、
、
、
「なんで、出ねぇんだよ」
大声で怒鳴ると、荒々しく受話器を置いた。
(ああ、勘弁してくれ、吐きそうなくらい頭が痛い)
肩で息をしながら、カルテを見直す。
「住んでるの、直ぐそこかよ」
………もぅ、仕方ない。
俺は、大きなため息を一つついて、あの女の子、麻生梨々香の家へと急いだ。
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