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「透野だ。・・・うわっ」
名字を口に出したとたん、体が思いっきり引っ張られる。
足がもつれながらも着いて行く。
そして閉められる玄関。
俺を引っ張って家に連れ戻したのは、息を荒げたお母さん。
俺の頭には何事かさっぱりだった。
「ど、どうしたの?」
「・・・真、よく聞きなさい」
何故か真剣な表情で俺の両肩を掴むお母さん。
「・・・透野明菜ちゃんは・・・いないのよ」
・・・意味が分からない。
「・・・何それ?でもそこにほら・・・」
居ないというところだけでも訂正しようと、閉められたばかりの玄関を開ける。
・・・しかしそこには明菜は居なかった。
その代わり、家の前にあるお母さんが植えた花を踏んだ形跡があった。
お母さんはその光景に口をあけて驚いている。
明菜が・・・何かが居たことは分かったんだろう。
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