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「・・・明菜、帰っちゃった」
「・・・真、その子、本当に居たの?」
また意味の分からない質問。
でも、今度はお母さんも混乱しているのがわかった。
だから正直に答えた。
「うん。いたよ。・・・いたでしょ?」
お母さんは黙って踏まれた花を見ていた。
少しして、小声で言った。
「・・・私には・・・見えなかった・・・」
その日から、明菜は俺の前に姿を見せなくなった。
そのままあっというまに数ヶ月がたつ。
さすがに違和感を持った俺は、お母さんに明菜のことを聞いてみたのだけど・・・。
透野明菜は、一昨年隣町で突然行方不明になった子の名だった。
両親は警察に通報して捜査してもらってたらしいけど一向に見つからず。
1年後、依頼主である両親が交通事故で亡くなってしまい・・・そのタイミングで捜査も打ち切られたとのこと。
でも・・・確かに居たんだ。
明菜はあの公園に。俺の目の前に。
周りの友達と両親は既に「幽霊だった」という話しになり、記憶からも薄れかけている。
そういう俺も、触れたことを覚えてるのはぶつかった後のあの手の感覚だけ。
でもそれは忘れられず、俺だけは・・・明菜が居たって信じ続けた。
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