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「課長はそうだったかもしれません…でも、でも私は本気でした。今でもっ…!」
震える声で最後まで言えない私に、驚いた武藤は私の腕を取ってこちらを向かせた。
「っ!?お前…何て顔してるんだよ…」
武藤にそう言われて私は始めて自分が泣いてる事に気が付いた。
でも、今はそんな事にかまっていられなかった。
今まで溜めていた思いが後から後から止めどなくなく流れてきて、自分では止める事ができなかった。
「課長は、私の事何とも…ただの妹だと…昔からそう思ってきたのは知ってます。 あの時、私がこの欠片を渡しながら、私の事お嫁さんにしてって…そう言った時も 課長は子供の言う事だから、私ががっかりしないようにいいよって言ってくれたのもわかります。
でも…でも、私は!…私は、子供なりに真剣で…今でも…今でも課長の事が…諒真さんの事が好きです!」
「…槇村…お前…」
武藤の顔を見上げたら、同情しているような視線を私に向けていた。
その表情を見た私は、つき物が落ちたように何故か冷静な自分に戻っていた。
もう…ダメなんだ…私の思いはこの人には届かない…。
「ご、ごめんなさい。今言った事は忘れてください」
「は?」
「あの…本当にごめんなさい!私、これで失礼します!」
自分の腕を掴んでいる武藤の手を振りほどいて、私は先ほど入ってきた玄関へと続くドアへと駆け出していた。
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