584人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
それは昔、近くの公園で天体観測を近所の子供達とした時、私が武藤にあげた、おもちゃのおまけ。
私はそれを星の欠片だと本当に信じて大切に持っていたが、どうしても武藤にあげたくてほとんど無理やり押し付けた物だった。
「…課長、これ、持っていてくれたんですね」
武藤に背を向ける形で私が問いかけると、
「…ああ。」
いつもより低い声で彼は答えた。
私は急に微かな期待で胸がドキドキしてきた。
私の勘違いかもしれない…ううん、ホントに偶然持ってただけかもしれない。
でも、今なら……。
それでも武藤の顔を見る勇気のない私は、そのままの体勢で意を決して聞いたみた。
「課長、それじゃあ、あの時の約束覚えてますか?」
「…約束…?」
「はい。あの時私が言ったお願いに、課長がいいと返事をしてくれた、あの約束
…」
「ああ…」
「それは…まだ、有効ですか?」
「……。あれは、子供の頃の戯言だろ?」
「ざ、ざれごと…?」
ギュッと心臓が掴まれたような痛みが走り、それを持っている手は微かに震えてきた。
最初のコメントを投稿しよう!