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私は、この日を境にあまり笑わない子になったような気がする。
ただの初恋の相手に振られただけじゃないかと思うかもしれないが、 私は彼を本当に信頼していたし、とても好きだった。
その彼に裏切られた事は幼心をひどく傷つけ、 そして、これがトラウマとなってどうしても男の人を好きになることができなくなってしまった。
高校生の頃には、さすがにその傷も癒え、男の人と付き合ってはみたものの、 どうしてもその人に対して心が開けない自分が居た。
そんな私を最初はやさしく見守ってくれていた相手の男性も、結局はあきれて私から去ってしまう。
こんな事の繰り返しに私も疲れ、男の人との接触をしないようになってしまった。
はぁ…。私、このまま一生恋もしないで、独身のまま生きていくのかなぁ…。
そんな事を考えながら、落ち込んでいる私の肩にポンッと手が置かれた。
「香澄先輩!」
ビクッ!と驚いて振向くと、後輩の深田優衣が心配そうに私を見ていた。
「先輩、どうしたんですか?何か具合悪そうですけど…」
言いながら、私の顔を覗き込もうとするので、私は慌てて、
「だ、大丈夫だから。ちょっと眠くなってきちゃって…。ほ、ほら昨日遅くまで起きてたから寝不足なの、ふぁ~」
変に思われたくない私は、言い訳を並べ立てながら、しまいにはあくびまでするという演技まで見せた。
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