第1章

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「別れる。やっぱり遠恋なんてありえへんわ。」 送信。LINEの画面、すぐに既読の文字。 返事が届く前にiPhoneの電源をオフにした。 卒業式の前日。 待ち合わせの校門には行かない。 コータは、卒業式にも出ずに今日、東京に行く。夢を叶える為に。 半年前に東京に行く事を聞いたときは、「ずっと待ってるから、私は大丈夫やから。」って答えた。 でも、やっぱり私は待たないって決めた。 待ってるから、とか重いやろ? 好きすぎるから、待たない。 私は、映画のヒロインとかちゃうから大丈夫。 現実の世界は時間が経てば大丈夫。 コータはコータの夢だけ死ぬ気で追っかけたらええ。 涙が止まらへんのは今だけ。 ……… 無理やり涙を止めて、いつもとは違う裏の門から学校を出る。 !!! いきなり後ろ手を掴まれ強く引かれる。 そのまま、ギュッと抱きしめられる。 「アホか。ちゃんとLINE読めよ。遠恋無理とか許さんから。俺はお前と別れるのが無理やから!……とりあえず読め。」 iPhoneの電源をオンにする。 LINEの画面。 あの後の返事。 「丁度、良かった。俺も遠恋無理やから結婚して下さい。」 文章の後に、膝まずいて指輪を差し出すニャンコ王子のスタンプが続いてる。 画面を覗いて固まる私を不安顔で覗きこむ アホ王子。 別れるって言った相手に即プロポーズとか、 その手段がLINEとか、スタンプとか…… 夢を追っかけるはずやのに結婚とか…… 「もう、アホすぎて力が抜けるわ。」 痛くないであろう、ぐぅパンチでコータにツッコミを入れる。 「大丈夫。俺は、お前が嫁になる気になるまで、ずーーっと、待ってるから。」 笑顔。 前半の私が恥ずかしくなるやん。 「大丈夫。私も、ずーーっと待ってるから、特急で夢叶えてきて。」
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