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ユキハside
クエスト物色中、ボードを見ながらふとハイセに聞いてみた。
「アリアスなら良いの?」
アリアスとは、この国最大の魔法学園がある都市で、都市全てが学園の恩恵を受けている。
都市のほぼ全てが学園と何らかの形で関係しているそうだ。
そんな環境に囲まれた学園では、世界最高峰の勉学が上手くいけばタダ同然で受けられるのだという。
勿論、最高峰なだけに、外部生は最難関の試験を受けなければならないそうだ。
まあ、最高の環境だろう。
しかし、気難しいハイセがあんなにあっさり首を縦に振るとは思っていなかった。
ハイセはクエストボードから目を離し、こちらを見る。
「…学があればどこでも生きていけるし、働ける。それに、アリアスの警備は最高だ。…リヒトや、あ、アンタが易々と傷付くなんてことはない。」
最後らへんは、頬を朱に染めて、俯いて、ぼそぼそと話していたので、よく聞こえなかった。
聞き返すと、何でもない、の一点張り。
一体、なんなんだろう?
「…と、とにかく!アリアスなら安全だからだ!…まあ、不安要素はあるけどな…。」
急に歯切れが悪くなったので、選んだクエストを受けながら話を聞くと、なんでも貴族階級ならではの、格差があるらしい。
そこで元貴族だと知られたくないのだという。
「…まあ、人に会うのは、暫くしてなかったから、誰も知らないだろうが…。」
苦々しげな口調で吐き出すように言った彼は、苛立ちを滲み出していた。
「…大丈夫。貴方はもう、私の家族だから。」
思わず出てきた言葉は、彼の琴線に触れたようで、その日はあまり不機嫌な雰囲気を出さなかったのだった。
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