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ちろりと視線だけで彼女を見下ろせば、どうやら確信犯だったようで意地の悪い笑みを浮かべていた。
「神谷から聞いたの」
「何が?」
「……仕送り、貰ってるって」
きょとり、と大きな目を見開いて、彼女は盛大に吹き出した。
「知らない知らない」と腹を押さて訴えながら。
年上なのに小さくて可愛らしい彼女は神谷と仲が良い。俺との関係も神谷が言ってるらしいし、何より互いに秘密はないと奴が言い放っていた。
一番で唯一の女友達なんだ、と嬉しそうに。
「……あんたさ、神谷にいろいろ相談されてんの」
「え?」
「神谷の弱いとこ、たくさん知ってんだろ。神谷は、あんたには素直に甘えてる。……ずるいよな」
なんて子どもっぽいことを言っているんだと絶望したけど、一度口にしたら止まらなくなった。
俺には絶対に見せない姿を、神谷はこの人に見せている。
俺は、友達以上の、存在のはずなのに。
「……でしょ」
「は?」
「ずるいのはそっちでしょ」
一瞬で大きな瞳が細められ、威圧するように見上げてきた。
可愛らしい外見だからか、その表情がやたらと恐ろしいものに感じる。
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