Another:magenta

9/37
前へ
/37ページ
次へ
 ちろりと視線だけで彼女を見下ろせば、どうやら確信犯だったようで意地の悪い笑みを浮かべていた。 「神谷から聞いたの」 「何が?」 「……仕送り、貰ってるって」  きょとり、と大きな目を見開いて、彼女は盛大に吹き出した。 「知らない知らない」と腹を押さて訴えながら。  年上なのに小さくて可愛らしい彼女は神谷と仲が良い。俺との関係も神谷が言ってるらしいし、何より互いに秘密はないと奴が言い放っていた。  一番で唯一の女友達なんだ、と嬉しそうに。 「……あんたさ、神谷にいろいろ相談されてんの」 「え?」 「神谷の弱いとこ、たくさん知ってんだろ。神谷は、あんたには素直に甘えてる。……ずるいよな」  なんて子どもっぽいことを言っているんだと絶望したけど、一度口にしたら止まらなくなった。  俺には絶対に見せない姿を、神谷はこの人に見せている。  俺は、友達以上の、存在のはずなのに。 「……でしょ」 「は?」 「ずるいのはそっちでしょ」  一瞬で大きな瞳が細められ、威圧するように見上げてきた。  可愛らしい外見だからか、その表情がやたらと恐ろしいものに感じる。 .
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

142人が本棚に入れています
本棚に追加