いつか会えるその日まで。

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高校の先輩と後輩という、ただそれだけの関係である僕らだが、新鮮な毎日を平凡に、ただただ平凡に過ごしていた僕の日常を、先輩はそこに現れただけでぶち壊してくれた。 入学して数ヶ月、とある廊下の曲がり角、急いでいた僕と(たぶん恐らく正解だけど)よそ見していた先輩は、少女漫画かってほどに鮮やかにぶつかった。 双方共に尻餅をつき、謝罪して立ち去ろうとした僕に、あろうことか先輩は軽い身のこなしで僕にタックルをしかけ、顔を固定すると、その桜色の小さな唇を僕の唇に…………。 目撃していた数人の生徒による伝言ゲームで、いつしか僕らはセットとして扱われるようになった。 「……だって、朝の占いで"廊下の角でぶつかった異性にキスをすると、幸せになれる"って言ってたんだもの」 「人の思考を読まないでくださいっ」 便箋から目を反らした先輩が、ずいっと顔を近付けてくる。 「読んでないわ、君の人差し指が唇をなぞっていたから、また思い出してるんだぁって思っただけよ」 言われて気付いてはもう遅い。握りしめた右手を背中に隠すと先輩はくすくす笑った。 「さぁ、学校へ行きましょう」
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