いつか会えるその日まで。

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ひとつの本棚の前で、先輩は歩みを止めた。いや、もう進めないのだ。 ここが第二図書室の一番奥。奥の壁を塞ぐように本棚が設置されているのだ。 「私がもし君に殺されたら、君は世間的に死ぬ事になるわ」 「ここには誰も来ないでしょう」 僕の声は冷静で、この空間にお似合いなほど、冷たい。なのに先輩は、そんな僕をも溶かすような熱い視線を向けてくる。 「ずっと待ってるから」 「……それが、なにか?」 先輩が後ろ手に本を抜き取った。胸の前でページをはらはらと捲り、分厚い表紙と背表紙が少し湿った音で本を閉じた。 「あなたをずっと待っていたのよ」 「……先輩がですか? なんのために」 手に取った本を足元に置くと、また次の本を手に取る。それを床に置き、本を重ねていく。 「もちろん私も待っていたわ、君を。でもね、先客」 「……まさか」 先輩は棚に残った本の残りを一気に振り払った。バサバサと床に落ち、埃を撒き散らし、ちぎれたページが数枚ひらりと舞う。 「君を待っているのは、彼女よ」 ほぼからになった本棚には、腕が横たわっていた。いや、胴体も足もある。首も、頭も。 ただ、命はない。
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