いつか会えるその日まで。

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驚きを隠せなかった。 彼女が僕を知っていたように、僕も彼女を知っていた。でも姉妹がいるなんて、妹がいるなんて、聞いてない、見た事ない、知らない。 「君が知らなくても当然だわ。妹さんの存在は産まれた時から消されていたのだから」 「消されていた?」 おうむ返しの僕に、先輩はうなずく。 「詳しい話は省くけど、妹さんは姉を……彼女を怨んでいたのね。そして、すり変わるチャンスを狙っていた」 「そんな話が、信じられると思って」 「君が殺人鬼だって事も、そう易々とは信じられないわね」 僕の言葉を遮って、先輩は微笑む。僕は唇を噛んだ。 「姉を殺してくれた君に感謝しているそうだわ。今は幽閉されていた場所から逃げ出して、他の街へ行ってる頃ね」 「……か、んしゃ?」 「図らずしも"いい事"をしてしまったわね、殺人鬼」 彼女の遺体は、命以外にもひとつ、無くなったものがあった。 「いつ、気付いたんです」 僕の正体に、僕の本性に、僕の素顔に。 「初めて会った時よ」 廊下の曲がり角、タックルされて、触れた唇。 「新入生の君から、ここの香りがしたんだもの」
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