いつか会えるその日まで。

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図書室の奥の奥。僕の背丈より低い扉がひっそりと僕を"待っている"。 この扉に鍵がかかっていない事は知っている。でも、開くのには少し躊躇いがある。 他の生徒はこの扉の存在を知らないだろう。折り畳み式の長机の下に隠され、机の上には誰も興味を持たない新聞が数社分並んでいるだけ。 一応辺りを見回してから腰をかがめ、扉の中に足を入れた。 扉を閉めるとひやりと冷たく湿り気すら感じる空気が触れる。暖房の完備などなく、かといって外気も入らない。こんな場所が本を保管する場所として最適であるはずがない。 そう、ここは本を保管する場所ではないのだ。 誰にも読まれなくなった廃棄待ちの本。雑な扱いのせいか、それとも長い年月をたくさんの生徒の手によって捲られ続けた人気作だからか、ページが抜けたり表紙や中身が破れていたりする本。 ここは、本の墓場だ。 学校側の都合だかで処分する事ができず、また他の図書館などへ寄付する事もできない本たち。 この暗く湿った部屋の中で、朽ち果てるのを待つばかりの本たち。 そんな薄気味悪くさえ感じる場所に、テーブルセットなんかを設置しちゃってる先輩は、絶対におかしい。
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