いつか会えるその日まで。

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小さいけれどお洒落な丸テーブルに、お揃いの椅子が二脚。テーブルにはシンプルな水筒とコップが二つ。ひとつの椅子に腰かけた先輩は、心許ない光の中で一心に本のページを捲っている。 「……目が悪くなりますよ」 僕が先輩にここへ連れてこられる前までは、全くの明かり無しで読書に勤しんでいたらしい。勝手ながらコードレスのスタンドを置かせてもらった。 「思ったより早く来たわね」 「お腹すいてるんです」 暗闇に浮かぶ先輩の顔は、ふわりとほころんだ。逆に僕は頬を膨らませ、空いている椅子に座るや否や持参したパンの袋を開ける。 「わぁ、今日はなにパン?」 「なんですか、貰うつもりですか、あげませんよ」 読みかけの本に栞を挟んだ先輩が瞳を輝かせるけど、僕はそれを知らんぷりでパンにかぶりつく。 「えぇ……あっ、こっちのコーンマヨパンおいしそう……あ、ほら、温かいお茶をあげるわね」 無視する僕に構いつつ、水筒……携帯マグだろうか、その中身をコップについでいく先輩。少し甘い香りが鼻をくすぐった。 仕方なく、本当に仕方なく、コーンマヨパンを先輩の方に滑らせる僕。 先輩の笑顔を、また無視する。
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