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気を紛らわせようとお茶を飲み干すと、先輩はまた湯気のたつお茶をついでくれた。
「こんなところでお話したり、お茶を飲んだり、食事をしたり、読書をしたり……よくできるわよね」
歌うように先輩が言う。
あんたが言うか、読書してるのはあなただけです、と僕の口は悪態をつけない。
「暗くて、寒くて、湿っぽくて、朽ち果てるのを待つばかりの本の墓場……」
先輩の小さな唇が、場違いに嬉しそうに笑みを作る。
「ねぇ、君は……私が呼び込まなければここには来なかったでしょうね」
先輩のコップの中身は、からだった。
「さぁ、一緒に来てくれるかしら。第二図書室の奥へ。秘密の……密会ね」
ただ綺麗な先輩は、ただ美人な先輩は、ただ注目の的な先輩は、ただどこかおかしい先輩は……。
これ以上なく、綺麗に美人に、目が離せないくらいに、おかしく、妖艶に笑った。
椅子から立ち上がり、僕に背を向ける先輩に、黙ってついていく。
第二図書室の奥。
秘密の密会。
[ずっと待ってるから]
今朝のあの手紙は……いったい誰からだったんだ。
僕宛なのは間違いない。
僕を"待っている"のは間違いないんだ。
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