悪癖

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 まさに予想外の反応。  彼があんな反応を示すとは思わなかった。一番の安全牌だと思っていたのにとんだ誤算だ。とはいえ急に素っ気ない態度をするもの可哀想なので、なんとなく誤魔化してその場を凌いでしまった。  やっぱり次からもいつも通りにしたほうが良いんだろうか。 「なあ、渉?」 「んー?」  ふいに肩を揺さぶられ生返事をしたら、更に両肩を強く掴まれ前後に揺さぶられた。自分の上に圧し掛かる重みに気づいて瞼を持ち上げると、こちらを覗き込む視線とぶつかった。 「あ、ごめん。寝てた?」 「十分くらい」 「そっか、ごめんね」  大きな目を不機嫌そうに細め、頬を膨らませて俺を見下ろす華奢な彼の背を撫でながら、記憶を倍速で巻き戻した。どこをどう見てもホテルの一室と思われる場所で、自分の腹の上に半裸で乗っていればそういうことなのだと、一目瞭然なのだが――誰だっけ?  人でなしと罵られそうなことを考えつつも、やっと記憶を引っ張り出した。 「いま何時?」 「二十一時過ぎたとこ」  そうだ、ラビットに向かう途中で会ったんだ。彼も確かそこで何度か顔を合わせている。それでまだ時間も早いからとちょっと誘われたついでに、ホテルに入ったんだ。 「……ついでにか」  いまだ俺の上で首を傾げている彼は、ほっそりとした身体に小さな顔と大きな瞳。アイドルっぽい可愛らしい顔立ちは十分過ぎるほど整っている。ただしそれは残念ながら全く自分好みではない。 「またやったか、全然飲んでないのに」  相手に聞き取られないほどの声で呟き、俺は片手で顔を覆い小さく息をついた。
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