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「この木だよ。ガキの頃よく登ってさ、夕日を眺めたりしてたんだよ。誰も知らない俺だけの特別な場所って思ってたんだ。この木って公園で一番高いんだぜ」
「へえぇ、こんなの登れるんだぁ」
「見えるか?あそこ。いちにいさん…七つ目の木の枝が出てるとこ。あそこが俺の特等席だったんだ」
「うわぁ…うちの子があんな所に登ってたら失神してしまうわ」
「まぁ確かに…俺も親になって分かったわ。でもあの頃の俺にはさ、世界中で唯一、俺だけの場所だったんだ」
―覚えてるさ。
まだ小さかったきみが、わたしによじ登って来ていたのを。
わたしはきみが落ちないかヒヤヒヤしたものだ。
わたしの腕に抱えられたきみは、キラキラした目で遠くを見ていたな。
何か悲しいことがあって、わたしに抱かれながら泣いたこともあったよな。
わたしには見守ることしかできなかったが。
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