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「俺のおふくろが小5の時に亡くなってさ、メチャメチャ悲しくて、さすがの俺もかなり凹んでさ。その時もこいつに登ったんだ。そしたらなんだかさ、気のせいなんだろうけど…なんだかコイツが俺を包んで守ってくれてたみたいに感じたんだ」
あかねはクスクス笑った。「ひろしくんがそんなセンチメンタルなこと言うなんてね」
「らしくねぇのは分かってんよ。だけどさ」
ひろしは幹に触れる。
「コイツが居なくなるって聞いたら、なんだかさ」
「それで、私としょうこを紹介に来たんでしょ?」
「そうそう」
ひろしは娘のしょうこを抱き上げた。
「隣にいるのが俺の嫁さん、そんでコイツが俺の娘だ。もう少し大きくなったら、俺の見た景色をこの子にも見せてやりたかったけど…」
抱え上げた娘を、下から一番目の木の枝に股がらせた。
「ここが限界みてえだ」
しょうこはたかーいと言って木の枝にしがみついていた。
「世話になった。ありがとうな」
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