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「こら、ちゃんと元あった場所に戻しなさい」がいつのまにか口癖になっていた。
息子の晴生(はるき)は唇を尖らせながら鉄道のおもちゃを箱にしまった。
都内での三人暮らしはなかなか大変である。広い部屋を借りようとすると賃料は一気に跳ね上がる。
そのため、僕と妻と息子は3人で1LDKに2年前から住んでいる。
独身の頃からIT系で働いていた僕は、若年層の割には給料を貰っている方だった。
新築のマンションの一室を借りて、ホワイトの床を常にクイックルワイパーで磨いていた。
そこまで物欲が強くはないため、欲しいものはなんでも手に入った。
休日は深夜まで趣味に費やし、次の日昼過ぎに目覚めても誰にも咎められなかった。
それが今では息子と妻の荷物が家の大半を占めており、それも見るも無残なほど散らかり足の踏み場なんてないのである。
住み始めの頃は自分で全て片付けていたが、2年も経てば人は諦めがつく。
元あった場所に戻すだけの簡単な動作が何故大人になってもできないのであろうか。
子供は仕方ない。だが妻が片付けられないことについては甘えとしか思えない。極め付けに僕が片付けてもお礼すらない。彼女には部屋を片付けることによるメリットがないのだろう。
妻のことは諦めても、子供のことは諦めたくない。日に日にその想いが募り、必然的に厳しい父親役をかうことになるのであった。
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