第1章

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 みんなは、透明人間になったら何をする? 元に戻る方法を探すだとかつまらない事は男なら言わないだろう。健全な男児が透明人間になったらする事といえばやっぱり、覗きだろ覗き。  と、いうわけで俺は今銭湯の前にいる。もちろん服なんて着ていないさ。服だけが浮いているなんて奇妙な光景、透明人間だってバレるかもしれないだろう?   意外と冷静だろ。そうだな、大抵は急にこんな事になったらもっと慌てるかもな。でも俺、寝起きだったんだよ。寝起きのテンションってあるじゃん。起きて鏡見たらジャージが浮いてるんだもの、歓喜歓喜よ。思わず叫んだんだけど、どうやら声も出ないみたい。俺は出してるつもりなんだけどさ、普段はちょっとした事でも壁ドン(ときめく方じゃないよ)してくる隣人がなんも反応しなかったんだからそうみたい。  まぁ、前置きはこれくらいにしようぜ。姿も見えなくて声も聞こえない。そして俺は銭湯の前にいる。最高のシチュだよな。もうビッキビキのバッキバキよ。何がって言わせんなよ。  それじゃ、いざ突入!  まずはドアだな。自動ドアなら楽だったんだが古い銭湯だからな。仕方ない。できるだけ静かに……体がギリ通る程度に開いてっと……おいおいおいおい、、俺のマグナムが引っかかってるよ。自慢の相棒が仇になっちまったよ。生憎、これからのパラダイスを想像したら治まる気配がないからな。なんとか通すしかないぜ……と、こんなもんよ。  中に入っちまえばもうすぐ目の前。悪いなじじい。毎日の番頭ご苦労だぜ。お前も覗きたいだろうが、これは透明人間だけの特権だ。  へっへっへっ、暖簾で仕分けただけ。昔ながらで最高じゃないか。じゃあ行くぜ?準備はいいな? オーーーーーーーーーーーーーーーープン!  オボロロロロロロロロロロロロロ!  吐いてないぜ? でも正直吐き気がカンストしてんだ。俺はちょっと忘れてたぜ。銭湯だもんな。客はそりゃあばばあばっかりだよ。ばばあばっかりさ。漫画みたいにはいかないよな。  邪魔したなじじい。お前にとってはストライクでも俺にとっちゃ大暴投の大ファールだよ。お陰で外に出る時に苦労はしなかったけどな。元気出せよ、相棒。
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