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「私がよく行くお店があるの!行ってみない?」
喫茶店でひとしきり話た後、ナツコさんは私に言った。
「スナックパブ ひじり」
とある雑居ビルの1階にその店はあった。
中に入るとカウンターとボックス席が2つある小さな店だった。
「お~ナツコ、いらっしゃい!」
カウンターには渋い感じのマスターがいた。
「あの店、パンドラちゃんにはお金が高いと思うから、これからはこの店に来てね!」
ニコッと笑いながらナツコさんは言った。
その気遣いが私には嬉しかった。
ナツコさんはこの店でも働いていた。
「マスター!この子、パンドラちゃんって言うの!プロボクサー目指してる16
歳!」
マスターは一瞬、「えっ」と驚いた顔になった。
「ダメじゃないか~、16歳が~!」
でも、すぐに笑いながらマスターは言った。
「座って、座って!」
ナツコさんはボックス席に私を座らせた。
それからは、「ひじり」に私は週に2,3回の頻度で通うことになった。
今考えても、本当に恥ずかしくなるけれど、相当面倒臭い客だったと思う。
16歳にしては多すぎる給料をもらっていた私。
家賃、食費がかからない寮なので、給料はまるまる使えた。
タクシーで繁華街まで行き、くわえタバコ、ダブルのスーツを着て、粋がって「ひじり」まで通っていた。
「ひじり」は小さな店で、女の子がナツコさんともう一人の子しかいなかった。
<つづく>
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