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「おう、何や!」
私は、フラつく足取りでその人の元に行った。
なっちゃんもマスターも心配そうに見ていた。
「兄ちゃん、構えてみ。」
私は酔ってはいたけれど、真剣に構えてみた。
はたから見たら、様になってなかったかもしれない。
Mさんは、私の前に両方の手のひらをミットのように突き出した。
「ワンツー打ってみ。」
私は真剣にMさんに向かって、ワンツーを打った。
「お~、なかなか、ええパンチやな。ほな、次、ワシな。」
そう言うと、Mさんの表情が変わった。
Mさんの前に両手を突き出した私。
先ほどの雰囲気とは明らかに違う。
「パッ、パーンッ!」
いつ打たれたのかもわからないスピードで、私の両手は弾き飛ばされた。
あまりのいきおいでバランスを崩し、尻餅をついてしまった。
その後、どうなったか酔っていてよく覚えていない。
ただ、敗北感というか、調子に乗って、なっちゃんの前でかっこ悪い姿を晒したのは強烈に覚えていた。
私は、あの日、その後どうなったか気になってしかたなかった。
3日程経って、どうしても確かめたくなって、ひじりに行った。
「いらっしゃいませ~!」
扉を開けると、いつものマスターの元気のいい挨拶。
カウンターに1人の男が座っていた。
パンチパーマでいかつい男だった。
(うわっ、何かヤバそうなんおるな~。)
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