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今から30年くらい前の話。
16歳でいろいろあり、家を出され、ある施設に預けられた私。
労働基準法?知ったこっちゃねぇ!
今じゃ考えられないんだけれど、朝早くから夜9時10時まで働かされていた。
休みなんてほとんどなく、あっても事務所の電話番という軟禁されたような休みくらい。
「上等だよ!こんな家出て行ったるわ!」
そんな威勢のよさもどこえやら。慣れない日々に気が塞ぎ込んでいた。
そんな日々を数か月過ごしていたある日。
「おい!パンドラ!最近、元気ないなあ。俺が気晴らしにおもろいとこ連れて行ったるわ!」
朝、そんな元気のなかった私に、声をかけてくれたDさん。
一緒に寝泊まりしているDさん。
私と同じ部署で、直属の上司であり、普段から何かと私を気にかけてくれていた。。
どこの世界にも、こんな人は必ずいる。
そんな優しさが、その頃の私には胸に沁みた。
夜の仕事が終わり、一息ついていた私。
「おーい!パンドラ、行くぞ!」
約束通りDさんが声をかけてくれた。
「これ着ていけ!」
Dさんは一着のスーツを手渡してくれた。
どこに連れて行ってくれるのか、久しぶりにわくわくした。
スーツでビシッと決めたDさんと、生まれて初めてスーツを着たぎこちない私。
二人でタクシーに乗り込み、ネオンが輝く華やかな街へ。
私にとっては別世界だった。
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