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出会い
あるビルの前でタクシーは止まった。
エレベーターに乗ったDさんは、手慣れた様子で「5」という数字を押した。
何だかわからないアルファベットで書かれていた店のドアをDさんが開けた。
「あ~らDさん!いらっしゃい!」
Dさんはここの常連らしく、ママさんらしき人が出迎えてくれた。
「今日はおもしろい奴連れてきたから!」
笑いながらDさんはママに言った。
ボーイさんに案内され、ボックス席に座った私たち。
「いらっしゃいませ~!」
ほどなくして、甘ったるい声と共に、ママさんと一人の女性がそれぞれ私たちの隣に座った。
私は田舎の中学出身で、女性との免疫がまったくない私。
私の隣に座った女性は、きらびやかな服装のせいじゃなく、あきらかに輝いて見えた。
「どうも~、初めまして!ナツコで~す!」
「ど、ど、どうも・・・」
私は照れくさくて、目を合わせられなかった。
ナツコさんは19歳。
触れ合っている膝が気になり、少しずつ離してしまう私。
その度にまた膝を擦りつけてくるナツコさん。
「コイツな、実は16歳やねん!」
タバコをくわえながらDさんが言った。
阿吽の呼吸でママさんがDさんに火を着ける。
「え~、未成年がこんなとこ来ちゃダメじゃな~い!」
笑いながらママさんは言った。
ナツコさんも笑っていた。
「コイツな、俺と同じで16歳で家出されて、頑張ってんねん!」
「え~スゴ~イ!」
塞ぎ込みがちだった日々がウソのように一瞬で吹き飛んだ。
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