それぞれの持ち分

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「もうお加減はいいんですか?」 「うん、もう何ともない」  化粧気が無いため男のようにも見える金璉の顔が、しかし、どこかにまだ疲れを滲ませて笑う。  この姐さんは月のものが来ると、病人のように寝付いてしまい、客を取るのはおろかお座敷にも出られなくなるのだ。 ――普通の()は月一回ちょっと具合が悪くなるくらいだけど、あの妓は二月(ふたつき)三月(みつき)にいっぺん病人になるんだよ。  仮母(かあ)さんもちょくちょくこぼしている。  まだ八歳の翠玉には月のものは来ていないが、何となく厄介なものらしいとは知れた。 「女なんて面倒しか無いわねえ」  金璉は肉付きの豊かな肩を揺すって笑うと、ふっくらした手で妹分の蒼白い小さな頬を撫でる。 「お昼にしようね」 「はい」  翠玉は頷くと、炒麺の香ばしい匂いの流れ始めた台所へ手伝いに向かった。
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