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「じゃ、今日はお天気が良くないから気を付けて下さい」
師父の手の温みを右の肩に感じながら翠玉は廊下をそっと歩いていく。
この前は稽古前から雨が降っていて師父の白髪も着物も濡れた姿でやって来た。
今日はいつの間にかどんより曇っていて湿った路地の匂いが微かに妓家の中にまで流れ込んでくる。
これは、いつ降り出すか分からない。
出来れば傘を持って師父の家まで送りたいけれど、あたしが一緒にいられるのはこの妓家の玄関先までだ。
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