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誤送の封筒
俺の名前は、苗字も下の名前もよくあるものだ。
おまけに近所一帯、このありふれた苗字だらけで、ここいらでは郵便物や宅配の誤送がやたらと多い。
ちなみに俺の場合は、近所の八十近いじいちゃんと同姓同名なので、あからさまに俺宛じゃない物が届いた場合は、こっちからそれを持って行き、向うに届いた俺宛の品をもらってくるようにしている。
でも、相手がその年のじいちゃんなので、郵便物にしろ宅配にしろ、間違われることはほとんどない。
高校生の俺の所に年金のお知らせは来ないし、有名ネット会社の小包がじいちゃの方へ届くこともまずない。
でも、どっちがどっちか判らない物はたまに間違って届けられる。そういう、開封と同時に気づいた物は、渡しに行った時に開けてしまったことを謝るようにしてるし、向こうもそうしてくれている。
でも今回は、どうしてか、開ける前に気がついた。
灰色の封筒で送りつけられた、いかにもダイレクトメールっぽい封書。
送り主はどこかの会社で、封筒に味気ない印刷がされているだけ。宛名も機械で打ち出されたそっけないラベル。
見れば見る程ダイレクトメールだし、この味気なさでは、俺宛なのかじいちゃん宛なのかも判らない。
だからいつもなら封を開けてしまうのだが、封書を前に何故か躊躇いを感じ、俺はそれをじいちゃんの家に届けることにした。
もしこれが俺宛だったら、早急に必要なものなら連絡をもらえる。その時に、勘違いで持って行ってしまったと言えばいいし、特にたいしたことのない物なら、次の誤送があった時にでも受け取ればいい。
じいちゃんの家に行くと、いつもは他の人が出て来るのに、珍しくじいちゃんが姿を現した。
「あの、これ、間違ってウチに届きました」
言いつつ封筒を差し出すと、とたんにじいちゃんの顔つきが変わった。
もぎ取るように封筒をひったくり、じっと俺を見つめる。
「中は見たのかい?」
「いえ、その、中は見てないんですけど…」
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