可愛い君

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抱きしめる力を緩め、横沢の顔を覗き込めば、俺はいつ出てくるの?ってそんな顔で俺を見つめてる。相変わらず涙は止まっていなくて、鼻水も光ってる。しかも、俺のシャツにまでついてるし。まぁ横沢のだから別に良いけど。 「……それから、お前ん家行って」 「……俺、んち?」 やっと自分が出てきたって、横沢が笑った。単純バカ。この後何を言われるのか分かってないくせに。さっきまで散々ひどいこと言われてきたのに、素直に俺を信じてる。今度は欲しい言葉をもらえるって、そう思ってる。 だからこういうところが、可愛いの。 可愛くて大好き。 今日はもう苛めない。これ以上ひどいことは言わないよ。 「そ。お前ん家。んで、お前の両親に、『息子さんを俺にください』って言ってやるわ。……まぁでも、地球なんかそうそう滅ばないからな。お前が俺のことずっと好きなら、滅ぶ前にちゃんと言ってやるよ」 「……とだ、……とだぁ、」 「嬉しい?」 「うれ、しっ、も、死んでも、いいくらい、」 「え?じゃあ死ぬ?ゴミ箱に捨ててやろっか?」 「や、だっ、」 「可愛い」 あぁ、やっぱりあの言葉は取り消し。コイツの鼻水でさえも愛しい。 俺は、今までにない程に泣きじゃくる横沢の涙はもちろん、鼻水も舐めてやった。 たまには……、甘やかしてやらないとね。 「横沢、大好き」 END
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