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「大地!何してんの?」
「……え?」
「え?じゃないよ。いつまで玄関にいるの?早く上がって、スイカ切って。俺、スイカ切るの無理。大きくてできない」
包丁を持った由貴が、ドアからひょこりと顔を出してそう言った。……恥ずかしい。変なことを考えていたせいで、玄関で突っ立ってたままだった。
慌てて脱ぎかけていた靴を脱ぎ、部屋へと上がる。
「どのくらい食べる?」
「二人で半分は食べよ」
「……そんなに?」
「うん。スイカめっちゃ好き」
けっこうな大きさだけど、そんな小さな体に入るか?と思いながら、由貴から包丁を受け取った。
ぐっと力を入れてスイカを切れば、よくそんな力があるねって、由貴が俺の腕をツンツンと触る。……ちょっと待って、今はそういう軽いお触りも禁止!
「そう?由貴が力ないだけじゃない?」
「えぇー、俺もそこそこはあるよ」
「はいはい。お皿、出して」
「もーう」
由貴が離れるとすぐに、俺はスイカを全て切り終えた。切ってる時に集中力切れたら危ないからね。スイカ、不安定だし。
それから置かれた皿に急いでスイカを並べ、縁側へと運ぶ。
由貴は俺の後ろをトコトコと付いてくると、ぴたりと横に座ってきた。
あぁだから、それもダメだってば。
「由貴、」
「ん?」
「いや、何でもない」
今日は早いとこ帰った方が良いかもしれないな。俺、何するか分からない。
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