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マイちゃん、マイちゃん、そう言っていたくせに……。俺のことを心配してくれているのが、その優しい声から伝わる。
俺たちの間に流れる何となく気まずい空気に恥ずかしくなり俯くと、床に落とされてページがくしゃりと曲がってしまったエロ本が視界の端に入ってきた。いつも見ている大好きなマイちゃんが載っているそれは彼にとっては大切なものだから、慌てて拾おうと手を伸ばしたのに、その手を強く捕まれた。
「それはどうだっていいから」
「あ、」
「なぁ、どうかした?」
「……っ、」
好きだと言葉にしてもらえなくても、なんだか心が温かくなった。
張り合う相手でもないだろうに、俺を選んでくれたみたいで嬉しい。
「ごめ、ん」
どうしたのかは、自分でもよく分からない。でも、今、自分がものすごく面倒な奴になっていることは分かる。だからごめん。こうなった以上、自分では気持ちの落ち着け方が分からないから、もう少しこのままでいさせて。
俺は、黙り込んだまま、彼の背中に頬を預けた。服を掴み、目を閉じる。彼の熱と匂いに包まれ、今度はどうしようもなく甘えたくなってきた時、急に彼が起き上がった。背中に抱きついていた俺はズルズルと床に落ちていく。
彼はそんな俺の両脇を抱え、向かい合わせになるように自分の膝に座らせた。
「ちゃんと、好きだよ」
「うん、」
「愛してる」
「うん、」
「世界で二番目に、だけど」
「……は?」
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