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さっさと食べて帰ろうと、すごい勢いでスイカを頬張ると、早食いの競争と取られたのか、由貴も負けじと食べ始めた。小さな口でガブリと食べるものだから、口の周りに種やら汁やらがたくさんついている。
「大地より、多く食べてやる」
「別に競争しようってわけじゃないんだけど」
「そうなの?違うの?」
「う~ん。違うよ。だからゆっくり食べな」
にこりと笑ってそう言えば、「変な大地ー」と由貴も笑った。……うん、変なのかも。いや、かもじゃなくて確実に変だな。
俺は由貴から視線を逸らし、持っているスイカにかぶりついた。種は庭に飛ばして!と由貴が言うもんだから、遠慮なく種を飛ばす。思ったよりも遠くに飛んでいく種を見て、由貴は「俺がもっと飛ばしてやる」と意気込み、ぶーっと吹いた。だけどすごい音がしただけで全然種が飛んでいかない。
「待って、今度はちゃんと飛ばすから。大地見てて」
「いいけど……飛ばないんじゃない?」
「ブーッ!」
「ふはっ、全然飛んでないし」
何をしてるのかと、不器用だなぁと、少し呆れる気持ちもあるけれど、でもその何十倍も可愛いがこみ上げてくるから。
「大地……?」
「もう無理」
食べ終わったスイカを皿に置いた。
それからキョトンとしている由貴の頬を、スイカの甘い汁ごとペロリと舐め、そこを軽く吸うようにして口づける。
薄目を開けて由貴を見ると、頬を真っ赤にして潤んだ大きな瞳で俺を見つめていた。
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