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「体、だけ?ずっと、これからも?」
「……ちがっ、」
「俺は、お前の、」
「……っ、」
「気持ちも、欲しいよ、」
彼の顔が歪んでいく。次々に溢れ出る大粒の涙を見て、俺の目からも涙がこぼれた。
胸が壊れそうなくらいに痛い。
幸せなのに、今までにないほど幸せなのに、胸が痛いよ。
「ひろ、む……っ、」
「ごめ、ん」
「……っ、あ、」
「好き、……好き、だよっ、」
「おれ、も、好き、」
彼が俺の頬へと手を伸ばす。俺はその手を掴み、自分のを重ねた。ゆっくりと指を絡めれば、指先から彼の心音が伝わる。愛おしくてたまらない。触れ合って胸が高鳴るのは、俺だけじゃあなくて彼も同じなんだ。叶わないと思っていたのに。あぁ……、夢みたいだ。
「好き……。俺、こんなこと、まさかって、」
「ひろむ、も、いいから……」
「……好きだ」
「ん、分かったから、」
「好き、」
口がバカになってしまったのだろうか。何度口にしても止まらない。息をするように想いが溢れ出てくる。
「ひろむ……。キス、してよ」
「……っ、」
触れたいと願っていた彼の唇に、そっと口づけた。一瞬だけの短いキス。それだけでもういっぱいいっぱいだと言うのに、彼は煽るように「もっと」と呟く。
「ばかっ、」
「ひろむ、なぁ……、もっと、」
「……だから、もうっ、」
初めてのキスは涙のせいで甘くはなかったけれど。何度も何度も、お互いの熱を唇から感じ合った。
END
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